人と街とモノをツナゲル つながる図鑑

ひとの想い

【ちっごのひとびと】重度の知的障害と自閉症の母 中本由美子さん

お母さんたちに伝えたいのは、「今を楽しんでほしい」と話をしてくれたのは、

重度の知的障害と自閉症の長男・大智(長男・18歳)さんの母、中本由美子さん。

子育ての体験、想いを聞きました。

いろんなお母さんが身近でがんばっていること。今を大切にすること。

今こそ地域の理解と「お母さん力」が大切だと改めて感じました。

(マザージャーナリスト 池田彩)

 

 

 

中本由美子さんはテレビ番組NHKクローズアップ現代+

「19のいのち ~障害者殺傷事件・16万アクセスが語るもの~」にも

多くの人に障害者のことを知ってほしいと出演されています。

 

リンク先より抜粋

由美子さんのメッセージ
“障害者は身をもって、生きることのすばらしさや、大切さを教えてくれる。
そんな彼らに「存在価値がない」などということは、決して言えない。”

 

「私だけが別世界に住んでいた」

息子の障害は1歳の頃まではわからず、視線が合わないことに気づいたのは2歳半の時でした。

物事への強い執着とこだわり、激しい偏食・・・。

幼い頃は、3つ違いの娘(姉)と重度の知的障害を持つ息子、

そして夫の両親という三世代で一つ屋根の下に暮らしていました。

子育てと大家族家庭の切り盛りで毎日が戦争のよう。

もともと段取りが苦手でしたが、

ケアワーカーさんにこのタイミングで来てもらってコレとコレをするなど、日々段取りがすべて。

それが今、仕事に生かされていると思います。

当時は全く余裕がなかったので、カフェでゆっくりお茶をすることの意味も、

仕事が終わってから飲みに行く人たちの気持ちもよくわかりませんでした。

自分の時間など一切なく毎日怒涛のように過ぎていく・・・。

私には世間一般の人たちとは全く別世界に住んでいるような感覚しかありませんでした。

 

「大ちゃんがいたからよかった」

保育園・小学校は公立へ通園・通学。小学校は地域の特別支援クラスへ通いました。

花瓶の水を飲んだり、石鹸を食べたりとエピソードは語りつくせないほどたくさんですが、

一番記憶に残っているのは卒業式のこと。

息子がジッしておけないため、茶話会への参加は厳しいかなと考えていた時、

担任の先生がクラスのみんなに

「大ちゃんが茶話会の時にじっとしていられないかもしれないけど、どう思いますか?」と聞いてくれました。

クラスの子どもたちは「じっとできなくてもいいよ。大ちゃんだから」と口々に言ってくれ、

心おきなく参加することができました。

先日、当時一緒だったお母さんに遭遇。

「大ちゃんがいたからよかった」と話してくれました。

周りに迷惑をかけているのではと気にしていたので、その一言がうれしく、とても胸に響きました。

中学校からは特別支援学校へ通いましたが「交流」で公立の中学校へ行くと

「大ちゃんだ、変わっとらんね」など、友達が声をかけてくれていました。

 

「地域の人たちとつながって暮らすこと」

小学生の頃、トイレに紙を詰まらせると水があふれてくるのが楽しいと覚えてしまい、

ちょっと目を離したすきに部屋中が水浸しに、なんてことがしょっちゅう。

長女の見送りで仕方なく5分だけ外出し、玄関のドアをあけた途端に、

水と一緒に息子が流れてきて噴水状態だったということもありました。

その時の楽しそうな顔は今でも忘れられません。

外で遊ばせたい、地域の方とも交流させたいと思うものの、

迷惑をかけてしまうのではないかという緊張感が手放せませんでした。

けれども小郡のタイムケアのボランティアの方が

いつも「とにかく連れておいで、大丈夫だから」と声をかけてくださり、

「ちゃんと食べないかんよ」と、手作りのお料理を玄関先に置いてくださったりで、

地域の皆さんとのつながりが心の支えにもなりました。

買い物に行っても何をするかわからないので、ゆっくりなんてできません。

薬局で、「またのご来店お待ちしております」と言われただけで

「また来ていいんだ」と涙が止まらなかったこともありました。

息子は感情を抑えられないので、興奮してきたら車に乗せ、

山の中の公園へ行き、落ち着くまで過ごすのが日課。

大声を出しても大丈夫、周りを気にしなくていい空間は、私にとっても大切な場と時間になりました。

このあたりの公園には詳しいですよ。

唐揚げが大好きで、お手伝いもしてくれるとても優しい息子ですが、

ある時、隣の家に向かってお茶碗を投げてしまったことがありました。

人を傷つけてしまうかもしれないという不安から、睡眠がとれない日々が続き、

このままだと共倒れになると入院させる決断をしました。

特別支援学校の高等部に10月まで通学し、その後は医療機関へ入院しています。

一緒に住まなくなって2年、月2回会いに行きカードで意志を伝える訓練をしています。

自由がきかない入院生活を見ると一緒に住める道があったのではないかと考えてしまいますが、

私も障害について学び、いろんな方の力をかりながら、一日も早く退院できることを願っています。

 

「子どもをよく見て今を楽しむこと」

障害のあるなしに関わらず、私たち親は、ちゃんとしないといけない、

偏見をもたれたくない、将来のためにこうあるべき、今のうちに能力を伸ばしてあげないと・・・と、

など子どもの状態をしっかり見ずに急いてしまう傾向があります。

子どもとお母さんが一緒に「今」を楽しむこと、それが子どもたちの安心感につながり、

その安心感がその先の未来を育くんでいきます。

私も一緒にいられた時をもっともっと楽しめばよかったと切に感じています。

ですから子育て中のお母さんには周りを気にせず「今」を楽しんでほしいと思います。

毎日の当たり前の暮らしが、

かけがえのない奇跡の日々なのだということを息子は身を持って教えてくれている気がします。

2017年3月 特別支援学校の卒業式 にて

(記事:お母さん業界新聞ちっご版2017年5月号 ちっごのひとびと掲載)

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