人と街とモノをツナゲル つながる図鑑

ひとの想い

【ちっごのひとびと】音・音楽で人を繋ぐ音楽療法士  近藤美和子さん

太鼓、木琴、鉄琴、シンバル、打楽器、民族楽器・・・楽器を使ってこどもたちと遊ぶ近藤美和子さんは小3と年長の元気な男の子のお母さん。音楽療法で人を笑顔にし、人と人を繋げることが使命というが、突きつけられたのは「自分はどう自分は生きるのか」という大きなテーマだった・・・。

(マザージャーナリスト 池田彩)

音楽療法士を目指して

5歳からピアノを習ってた私は、親にはずっと、教師になりなさいと言われて育ちました。ところが中学生の時に音楽と心理の関係性に気づき、教師よりも音楽・心理・教育・福祉が結びついた道に進めたらいいなと漠然と考えていました。

18歳の時偶然に「音楽療法」の特集番組を見て、「これだ!」と、カミナリに打たれたような衝撃を受けました。しかし、今から20年も前、「音楽療法」が日本で認知されていないころのこと。周囲には理解されず、魔術的にとらえられていた時代です。

高校の担任に「音楽療法士になりたい」と話し、相手にされなかったのを覚えています。大学の教育学部へ進むと、幸運にも、音楽療法士の先生との出会いがありました。

今でこそ、教師を目指す人が福祉のことを学ぶのは当たり前。けれども当時は、専攻外の福祉のクラスに顔を出すことも珍しく、同級生からは、「なんで美和子はそんなことを勉強するの?」と言われていました。

3年間の下積み生活

大学4年生の時、たった一枚の「音楽療法士募集」の張り紙を見つけました。

すぐに就職を決め、山口で3年間、『音と人をつなぐコ・ミュージックセラピー』の著者でもある恩師、中島恵子先生のもと、音楽療法士として下積み時代を過ごしたのです。

音楽療法とは「その人が豊かに生きていくために必要な、音・音楽を使った対人援助」。対象は、ホスピスや精神科、子ども、高齢者・・・といろいろ。私は、心身にさまざまな病気や障がいのあるお子さんの発達支援に関わらせてもらっています。

彼らは決して、「お金持ちだから、社長さんだから」と肩書で人をみることはありません。「人の生」を問われるのが音楽療法ともいえます。

学びの大きい3年間でしたが、とにかく「苦しかった」。家賃1万円、風呂トイレ共同のアパート生活。朝9時から21時までが勤務後にミーティングがあるので、帰宅は毎日深夜1時。ヘトヘトになりながらも頑張れたのは、「対象者のための音楽療法」をみっちり叩きこまれたからです。

ミーティングでは、「なぜその音を出したのか」「何のために、どう音を使うのか」「あなたはどう感じたのか」をとことん問われました。

ダメな自分・できない自分・変われない自分に向き合う、苦しい日々。師匠から「対象者を泣かせてはいけない。その分あなたが泣きなさい。苦労しなさい。変わりなさい。」と言われ続けた3年間。まさに、私のセラピーの原点です。

 

音は言葉

言葉で「一緒だね」と伝えるよりも、同時に同じ質の音を出すことで、「一緒」ということを感覚的に伝えることができます。

また心身のリズムテンポは人それぞれ。早いテンポしか持っていない子どもに言葉ではなく、ゆっくりと音を出してみせる。すると、そのテンポを体で感じることができます。音楽を通して自分のテンポに気付き、いろんなテンポがあることを経験する。このようにして自分の中にバリエーションを増やしていくと、いろんな人や環境を受け入れ、生きる世界を広げていくことができます。

たくさんの感覚を駆使して楽しく遊びながら、心身に直接届けられるのが、音楽のいいところ。音を通して、普段は見られない姿や笑顔をに出会うこともできます。

たとえば、重度の障がいがあり、言葉でコミュニケーションが難しい人が太鼓を「ドン」と鳴らすだけで、それがその人の言葉になります。音の出し方によっても、その人自身が見えてきます。

人と話して、心が通じないことも少なくありませんが、音は、ダイレクトに響きます。セラピーをする中で音と音のコミュニケーションができ、音で繋がれた瞬間は最高!私のかけがえのない宝であり、その一瞬のために、私が在ると思えるのです。

音に合わせて絵を描く子どもたち

 輪音への想い

私の「先生」は、対象者である障がいのあるお子さんと、そのお母さん。音を出す時は、その人の呼吸や息からはじまります。「息」とは「生き」。人が出す音は生きる証そのもの

 すべては当たり前ではないこと、生きるとは何であるか、本当の幸せや豊かさとは何かなど、大切なことをいつも、彼らに学んでいます。

「音に本当」と書いて本音。音の中に本当の自分が見えてきます。それは、私も同じ。どう生きるのか、どう生きたいのかを常に突きつけられては気づかされ、人として・セラピストとして、学ばせてもらっています。

屋号の「輪音」は、音・音楽で、人が輪のように繋がっていきたいという想いと、「和音」をかけたもの。一つの音では和音になりません。2つ3つと音が重なって、色んな音色になる。和音のように、人の繋がり・重なりで、豊かな和音・音楽を産み出していきたいですね。  

「人は一生発達する」とは師匠の言葉です。音・音楽を通して、子どもたちが豊かに生きるお手伝いをさせていただきながら、私自身も現場で一生学び続け、共に成長していけたらと思います。

こどもと音楽遊びの広場「輪音(わおん)」
近藤美和子(日本音楽療法学会認定 音楽療法士)
主な活動場所
筑前町・大刀洗町・朝倉市・久留米市・大野城市・春日市
TEL090-2290-9851
✉konchi55@cv-net.jp
主な活動
・心身に障がいのあるお子さんや成人の方を対象とした音楽療法
・幼稚園・保育園・子育てサークル・支援センターでの音遊び
・保育士さんや施設職員などへの研修や大人向けワークショップ
・行政の子育てイベント・音楽イベントなど

(お母さん業界新聞ちっご版2017年4月号 ちっごのひとびと掲載)

お母さん業界新聞ちっご版とは?

百万母力の子育て情報誌「お母さん業界新聞ちっご版」

久留米を中心に毎月1万部発行。

お母さん自らがペンを持ち手配りで新聞を届けることで、孤立した子育てをなくし、お母さん・親同士がつながり学びあいながら長屋的子育ちができる活動を行っています。岩田屋久留米店屋上ソライロ広場にも設置。

文:池田彩
写真協力:近藤美和子

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